1.RPA導入の増加
 昨今,人手不足の影響もあり,RPAの導入が積極的に行われています。
RPAは,オフィスにおけるコンピュータ上の作業を定型化・自動化するものです。導入した業務工程で「かかる時間が半減した」「6割になった」というような話題が新聞などでも大きく扱われています。「メガバンクが導入して人員の配置転換を進めている」というような話題でご存知の方も多いでしょうとはいえ,PRAを導入して成功している企業がある一方で,失敗している企業がまた多いのも現実です。成功と失敗,この差はどこから生まれるのでしょうか?

2.RPA導入失敗の3つの原因
 RPAの導入失敗には3つの原因があります。

(1)カタログスペックの受け売りをそのまま信じる
 ひとつの問題は,各サービスが謳う「カタログスペック」の情報をそのまま受け入れてしまうことです。多くのサービスで,「これだけ業務を効率できる」「これだけコスト削減できる」「このような事例がある」「こんなにも多くの業務で適用できる」ということが紹介されているでしょう。
 RPAは,多くの企業がサービスを提供していますが,その基本機能は,「人が行っていたコンピュータ上の操作を何らかの形で記録し,それを再現できる状態にし,自動化する」というものです。つまり,コンピュータ上の業務でなければ適用できませんし,くり返し行う業務でなければ,その導入で効率化されるわけでもないのです。
特に「何をくり返し行う業務と言うのか?」について,十分な理解のないまま導入してしまったり,処理エラーが出た場合のことを考慮しないまま導入してしまったり,極端なケースでは「導入しさえすれば,効率化できる」と考えてしまうこともあるようです。
RPAは,他の専門性の高いアプリケーションと比較すると,その操作の易しさや効果が出やすいといった面で,非常に手軽な部分があるのは確かです。とはいえ,例えばexcelやwordなどの基本的なアプリケーションであっても,それが機能上で出来ることと,それを使うことには,大きなギャップが存在します。それは,RPAでも同様であり,決して「魔法の道具ではない」という点には注意が必要です。

(2)導入したRPAの「サイズ」違い
 もう一つの問題は,「サイズ」違いと呼ばれるものです。
 RPAの導入にあたっては,「RPAの利用待ちの状態を作らないこと」「RPAを利用するために日々業務間調整が発生しないようにすること」が非常に重要です。と言うよりはむしろ,この2つの条件を満たさなければ,何のためのRPAの導入なのか,わからなくなってしまいます。
RPAの導入で重要になるのは,「必要な人が,必要なときに,必要な業務で,RPAを使える環境をつくる」こと。その一方で,RPAを大量導入したのにほとんど稼働していないというようなことが起きてしまっては,コストの無駄を発生させてしまいます。
 つまり,必要量とコストとのバランスをとって導入することが大切になるのですが,このバランスの崩れにより「サイズ」違い,が発生するのです。

RPAの各サービスの違いは,ごく簡単に言ってしまえば,RPAそのものとも言えるアプリケーションソフトをインストールするタイプか,ネットワーク上で行うタイプか,といったその動作環境上の違い,ユーザーインターフェースと呼ばれる使い勝手の違い,料金体系の違いの大きくは3つです。
 
 導入できる業務量が少ない,利用される方も1,2名などというような場合であれば,インストール型が第一選択肢です。利用される方々や業務が限られるということは,利用される方や利用する業務間の調整の必要性が低いのだから,コスト優先で選べばよい,ということです。インストール型の場合,毎月の固定費にあたる費用が基本的には抑えられるため,導入本数が限られているというような場合であれば総コストが安くなる傾向があります。

 一方で,導入する業務が多く,利用される方も多い,というような場合は,ネットワーク型が第一選択肢になります。このタイプの場合,基本的にはライセンス契約をベースとした利用料を支払うタイプの契約となるため,ライセンス契約数の変更がしやすく,RPAを利用する業務対象や,担当者の増減に対応しやすいという面があります。ただし,導入本数が少ない場合,毎月の固定費にあたる費用により割高になる場合があります。

 最も悩ましいケースは,テスト的に導入した上で,うまくいけば拡大しようと考えるケースです。
一方では「テストでうまくいったのに,初期にインストール型を選択したためにコストの問題で拡張できない,別のサービスに切り替えが必要で一から作り直しになる」,一方では「ネットワーク型を選択したが,適用できる業務が限定的だった。そのまま使うと定期的に,割高なコストがかかり続ける」といった,それぞれにリスクがある,ということです。

ただ,以上はあくまで一般的な例です。よって実際に導入を検討される際には,サポート体制なども含め複数のサービスを比較し,導入することが大切になると言えます。

(3)不明確な業務フロー ~ ビジネスプロセスの明確化不足
 RPA導入失敗の原因として最も大きいのが,「不明確な業務フロー・ビジネスプロセスのままRPAを導入する」というものです。
 「RPAを利用できる業務がどの程度あり,それを利用する人がどの程度いるのか」が,コストとのバランスも含め重要になることは,すでに見てきたとおりです。
しかし,他にもコストとのバランスで重要になることがあります。それは,「RPAを利用する業務を,どのタイミングで行う必要があるのか,どの順序で行う必要があるのか」「その処理にどの程度の時間がかかるのか」ということです。つまり,明確な業務フローがないと,業務とコストとのバランスを考えることができない,と言えるのです。
銀行などの金融機関は一般的に,業務フローが非常に明確に定義されています。「顧客のお金を取り扱う業務が事業そのものである」という意味で,「RPA導入以前から明確な業務フローがあった」。極論すればこのことが,「<ある意味では何もせず>とも<RPAを導入して成果が出せた>理由」なのです。
逆に業務フローが不明確なままRPAを導入された企業は,ほぼ例外なく,RPAの導入に失敗している,と言えます。

3.RPA導入で失敗しないために
 RPAの導入失敗は,実際のところは非常に多くなっています。それは,教育も含めた「必要な準備の不足」が根本的な原因と言えます。日々の業務を明確に定義し,業務フロー・ビジネスプロセスを整備していないと,RPA導入の失敗確率は飛躍的に高まるのです。
RPAの導入を検討するのであれば,まずは自社・自部門を冷静に見つめ,RPAの導入の前に「必要な準備をすること」が大切になると言えるでしょう。場合によっては「その準備ができていると言えるのか」,ビジネスプロセスや業務フローに精通した専門家から評価を受けるといったことも,検討する必要があると言えます。

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